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January 17, 2008

北方謙三「黙約」(ブラディ・ドール⑥)

北方謙三「ブラディ・ドール」シリーズ⑥にあたるのが、この「黙約」。タイトルもかっこいいよなあ…。個人的にはこのシリーズで、もっともドキドキしながら読んだ作品。
Mokuyakubloodydoll6


主人公は、抜群の腕を持ちながら、大学病院を辞め、このN市に流れてきた外科医、桜内。文庫カバーには、「砂糖菓子のように崩れていく―女はそう形容した。そんな男に魅かれるのだと……。手術には抜群の技量を持ちながら、野心に背を向け、場末をさまよう流れの外科医。闇診療に手を染めたのも、港町の抗争に巻き込まれたのも、成り行きで意地を張ったのがきっかけだった」とある。

N市に開いた診療所で、闇診療に手を染める桜内。あるとき、立て続けに重症患者の手当てを引き受ける。その見事な処置ゆえに、抗争のなかに巻き込まれ、何人もに探られる。警察権力にも意地を張り、脅しや圧力を避けようともしなかったことで、事態はますます複雑になる。

しかし桜内は、そうした時間のなかで、N市に集まっていた「ブラディ・ドール」の男たちとも出会い、互いに関心を持つようになる。

男だけではない。桜内の腕に目をつけた大崎内科の女医、大崎ひろ子とも出会う。そして、かつてはやくざの女房で、血の好きな女と周囲に揶揄される看護婦、山根知子は、自ら桜内の愛人を志願する。

拉致され、痛めつけられても、暴力に屈しない桜内。川中のもとに集う藤木や坂井、そして叶などのように、戦闘力で暴力に対抗するわけではない。気持で屈せず、頑なに意地を張り続ける姿に、知子は何かを感じる。

ついには、自らが腿を撃たれ、体内に残った銃弾の破片を、知子だけを助手に、自分の手で摘出する。点滴もないままだ。

複雑に入り組んだ抗争のなかで、敵の擁する日本刀を使う腕利きの刺客には、坂井までも傷つけられる。しかし、最後にその刺客を退けたのは藤木だった。

これで事態は収拾に向かうかと思いきや、ことの発端を起こした人物である、藤木の元兄弟分、高安は、最後に藤木との間で、昔のケリをつけようとする。

互いに自分が殺されることを望んでいながら、勝負を決しようと対峙する二人。川中も坂井も桜内も、急いで現場に向かっていく。

その後の重く悲壮な結末は、この後も続く「ブラディ・ドール」シリーズの行方を象徴するかのようだ。自らの掟にこだわり、闘って去っていった男たちを、残された仲間は忘れることなく生きていくことしかできない。

実は本作「黙約」は、このシリーズの⑩にあたる「ふたたびの、荒野」を除くと、いちばん最後に読んだ作品だった。これより後の作品に、なぜ藤木が登場しないのか、理由はわかるものの、その経緯を知りたくてうずうずしていたのだが、書店でも古書店でも、なかなか見つからなかったのだ。

物語の途中で、藤木のジッポを何気なく託される坂井。それを見ていたキドニー。

エンディングの場面と、そこで交わされる男たちの科白には、「ブラディ・ドール」ファンなら涙せずにはいられないと思う。

【以下、関連記事】
北方謙三「黒銹」(ブラディ・ドール⑤)
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北方謙三「肉迫」(ブラディ・ドール③)
北方謙三「碑銘」(ブラディ・ドール②)
北方謙三「さらば、荒野」(ブラディ・ドール①)続き
北方謙三「さらば、荒野」(ブラディ・ドール①)


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