北方謙三「いつか友よ」(挑戦⑤)
北方謙三「挑戦」シリーズの第5弾、「いつか友よ」。ペルーでの闘いの場から立ち去り、カナダの山奥で暮らす水野竜一が再び主人公となる物語。2008年1月現在では、これが「挑戦」シリーズの最終巻となっている。

文庫版カバーにはこうある。「『心の痛みを忘れない猛獣、そういうのを狼(ロボ)というのよ』水野竜一の耳に女がささやいた。ペルーの村を離れ、カナダの山奥に流れた彼はひとりの日本人少年に逢う。殺された父親の復讐のために強くなりたいという少年を、竜一は一人前のコマンドに仕立て上げる。だが、巨大な組織の前に、少年の力はあまりに非力だった。ついに『狼』は立ち上がる」と。
カナダの山岳地帯の森林の奥の山小屋で、一人ひっそりと暮らす水野竜一。この小屋へは、奥地で猟をしたいという人間しかやってくることはない。
しかし、その土地に現われた少年。それを追う男。少年から話を聞いてみると、父親を殺され、自分も追っ手に狙われているらしいことがわかる。少年はどうやら日本人だった。
闘うことに虚しささえ感じ、人里を離れて生きる竜一にとって、こうした闖入者は、わずらわしい存在でしかなかった。しかし、追っ手に追われ続け、それでも必死に生きようとする少年に、竜一は何かを感じる。
少しの間、ともに生活する間に、竜一のなかで少年に対する気持に変化が生じる。父親の敵を討ちたいと願う少年の気持ちを受け止め、戦闘に必要な技術と精神を叩き込む竜一。
やがて少年は、かなりの戦闘力を持つコマンドに成長する。一人、闘いに向かう少年、圭太郎。しかし敵は手ごわかった。「やるべきことはやった」と言い残し、死んでいく圭太郎。
少年の思いを胸に、竜一は森林を歩み出て山を降り、闘いに向かう。それでもカナダでの闘いで、決着はつかなかった。敵にかかわる日本人を追い、再び竜一は帰国する。
竜一を迎える吉川栄。「老いぼれ犬」高樹との再開。そして日本での標的である、政治屋の元締めと仲間との戦い。闘いを前に、高樹との会話で竜一はこう語る。
「俺に信じて貰っていい男がいた。俺に信じられる資格を持って、死んでいった男がね。その男は、自分の父親を信じた。信じて闘った。正義とか悪とか、むなしいものだ。ひとりの人間を信じられるかられないか。生きることのほんとうの意味が、そこにあるのだとそいつは教えてくれましたよ」。
標的、沖田のボディガードは剣道の達人。幼かった友のために、勝負のわからない闘いに挑む竜一。かつて抱いていた夢であった南米に渡り、数々の闘いを経験してきた「狼(ロボ)」こと水野竜一が、「風の聖衣」から数年を経て、再び日本での死闘を繰りひろげる。
「もっと続きが読みたい」と思わせる竜一の生き方と、久しぶりに祖国に戻った竜一の人間的な面を垣間見ることができる作品。かなりお勧め。この本がなかなか見つからず、八重洲の大手書店で見つけたときは嬉しかったなあ…。
【以下、関連作品】
北方謙三「檻」(挑戦シリーズ関連作品)
北方謙三「風群の荒野」(挑戦④)
北方謙三「風の聖衣」(挑戦③)
北方謙三「冬の狼」(挑戦②)
北方謙三「危険な夏」(挑戦①)


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