北方謙三「冬の狼」(挑戦②)
この「冬の狼」は、前作「危険な夏」に続いて、水野竜一が再び深江、野口、ギイさんとともに闘う「挑戦」シリーズの第2弾。

「危険な夏」の後、抱いていた夢のとおりに南米に渡っていた竜一が、3年ぶりに帰国。かつての仲間だった大人たち、深江、野口、ギイさんを訪ねると、深江は姿を消し、野口、ギイさんも、深江のつくった会社では居場所をなくし、他の場所で深江を忘れたかのように生きていた。
そうした状況のなかで、竜一は深江を探そうとする。竜一は同時に、南米での仲間たちが伐採した大量の材木の、日本への輸出先を見つけることが目的だった。
そこで、吉川合板の女社長・吉川栄と出会う。竜一が日本へ運ぼうとする材木を得ることで、周囲からの圧力による危機的状況を打開し、会社を再建しようとする栄。南米での義兄弟・アキとその村の仲間のためにも、確実に日本への輸出を成功させようとする竜一の利害は一致した。
しかし、行方のわからない深江を探すことで、危険な敵と遭遇し、戦いの深みに自ら踏み込んでいく年下の竜一に、栄は商売を超えた感情を寄せるようになる。
かつて深江の盟友であった光村の真意を探り、深江を見つけようする竜一。そして、想像を超えた大敵に立ち向かおうとする深江の意思を知る。やがて、野口、ギイさんも、深江を探す竜一の闘いに加わる。
アキを首長とする南米の山中の村と、そこでの仲間を守るために、ゲリラと闘い続けるなかで、さまざまな戦闘術を身につけ、ゲリラからも「狼(ロボ)」と呼ばれて恐れられるようになっていた竜一。その竜一の闘いの血が、深江の敵との闘いで再び目覚める。
しかし、深江を探す闘いのなかで、片腕の老人、ギイさんが命を落とす。この闘いは、竜一と野口にとって、なおさら避けることのできないものとなる。
やがて深江とも会うことができ、意図を理解した竜一。抑えていたけものの血が、竜一を死地に向かわせる。
「あたしの誇りは竜よ。あたしの狼、冬に向かって走る狼」といって、竜一に唇を重ねる吉川栄。
「老いぼれ犬」高樹も登場。竜一にけものの匂いをはっきり感じ取り、牽制をしつつも、一人でも闘いに突っ走る竜一をあえて抑えようとはしない。
やがて闘いは終わり、深江と敵対していると見せかけていた光村は、巨大な敵の策謀の証拠を手にして、検察で深江の主張を裏付ける証言をする。
闘いには勝つことができた。しかし、ギイさんはもういない。闘いには勝ったが、野口の命を奪った相手はまだ生きている。たった一人で政治家・宇野の屋敷に踏み込み、宇野の命を奪ったものの、同時に己の胸にも銃弾を受ける竜一。
そして、竜一の殺人を宇野の自殺として処理して、竜一を再び南米へと逃がす「老いぼれ犬」高樹と深江。南米に向かうミゲール号に竜一とともに乗り込んだ吉川栄は、ペルーのアキとの約束、自分との約束を守るためにも、竜一が死ぬことを許さない。
こうして再び南米へと向かう竜一の今後の生き様と闘いが、この「挑戦」シリーズを通してテーマとなる。
このシリーズ1作「危険な夏」と第2作「冬の狼」は、国内が物語の舞台だが、この後の物語は主にアンデスの山中へと舞台を移す。
ゲリラと死闘を繰り広げる「狼(ロボ)」こと水野竜一が、なぜ闘い続けることになったのか、その経緯が書かれているのが、本作「冬の狼」だ。
【以下、関連作品】
北方謙三「危険な夏」(挑戦①)


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