北方謙三「危険な夏」(挑戦①)
北方謙三作品のなかでも躍動感あふれる「挑戦」シリーズの①となった「危険な夏」。
シリーズ一連の作品のなかで主人公となるか、もしくは主な登場人物となる若者・水野竜一が初登場。まだ大学生であった竜一が、アルバイト先の深江産業で社長の深江冽、野口、ギイさん、小坂という大人たちと出会う。
意地を賭けて巨大企業に挑む彼らの闘いに加わることで、やり場のないエネルギーを持て余していた竜一は強烈な夏を体験する。
自分の部屋の壁に、ペルーを中心にしたアンデス山脈の地図を貼り、「地球の裏側に行ってみたい」という夢を抱いていた水野竜一。正式に調査されていないため白いままのペルーの山地の地図。その白い部分に「自分で色をつけてみたい」と野口に話す竜一。
闘いが終わった後、深江産業を再開しようとする仲間たちと離れて「南米へ行ってみよう」と思う竜一。この後、ペルーの山中でゲリラとなり、壮烈な殺人術を身につけて「狼(ロボ)」と呼ばれる戦士になる水野竜一の旅が、ここから始まる。
作中には、シリーズを通して欠かせない役割を演じる「老いぼれ犬」高樹刑事も登場。若き竜一にも「けもの」の匂いを感じ取る。
深江の恋人・朝子の存在感も魅力。
実はこの作品を一度読んで忘れかけてから、「挑戦」シリーズの②の「冬の狼」を読んでみたら面白く、また古書店で「危険な夏」を見つけて読み直した。
次作「冬の狼」でも登場する深江、野口、ギイさんという人物たちとの出会いにさかのぼることで、「危険な夏」がより面白く読めた。
後にはほとんど無敗の戦士となる竜一も、この「危険な夏」の冒頭では、街中の喧嘩で野口に殴り倒されている。


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