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July 09, 2008

北方謙三「水滸伝」全19巻

Suikoden119
前回の読後感想&紹介文を書いてから、ずいぶん時間がたってしまったが、主な理由は、この北方謙三「水滸伝」にかなりはまってしまったことによる。一挙にというほどではないが、空き時間はほとんどこのシリーズにのめりこみ、7月までにかけて、ほとんど休まず全19巻を読み進めてしまった。

いやー、北方謙三先生には参りました。実はこれまで、日本語訳された「水滸伝」を通読したことがなかったのだが、この北方水滸伝には、2巻を読み始めた頃から、まさにぐいぐいと物語の世界に引きずり込まれた。また、その引き込まれ方が、ひとつの快感にもなってきた。

文庫版の解説などを読むと、この「北方水滸伝」は、これまで伝えられてきた水滸伝を、いったんすべて消化したうえでバラバラに解体し、それを新しい物語として再構築したようなものだという。それでは、この「北方水滸伝」をもって初めて水滸伝を通読した読者はいったいどうなるのだろう。これはもはや、北方水滸伝をもって本来の水滸伝と思わざるを得なくなるくらい、強烈な“刷り込み”が行われてしまったに違いない。

宋を倒して新しい国づくりをめざす志を持った男たちが梁山泊に集い、それぞれの意思と持ち場で闘いに挑んでいくさまを描いた、この水滸伝。大筋としては単純ではあるが、そこに出てくる一人ひとりの生き様と、闘いに挑んでは死んで行く、その死に様は、これはふさわしい表現ではないかもしれないが、非常に多彩で輝かしい。

たとえば最近の映画やドラマでは、たくさんの登場人物をからませることによって、物語の展開をふくらませていくという手法が流行っているようだが、そうした意味では、この「水滸伝」は、梁山泊に集う「108人の好漢」が織り成す人間模様のボリューム感で、現代の物語を圧倒する迫力がある。

そして、その漢たちのほとんどが、やがて闘いのなかで死んで行く。そして残された者たちは、死んでいった仲間たちを決して忘れることはない。

人間関係の希薄さや難しさが切実な問題となっている現代だから、よけいにこの物語の登場人物たちの生き方と、たとえ志なかばであっても、同志に志を託して散っていく漢たちの姿と友情に、憧憬に近いものを感じてしまうファンも多いに違いない。

文庫版19巻の通読後は、何か虚脱感に近い満足感があった。文句なく面白く、楽しめる作品だったと思う。

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北方謙三「灼光」(神尾シリーズⅡ)

Syakkou
北方謙三「灼光」は、かつて一等航海士であった神尾修二が、横浜で陸(おか)に上がってから知り合った登場人物らと、ときには海を越えて外国で闘いを繰り広げるハードボイルド、「神尾シリーズ」の第2弾である。今回は、失踪したひとりの青年を追って、アフリカ・コートジボワールまで神尾はやってきた。そこから物語が始まる。

文庫版カバーにはこうある。「失踪した青年、水町俊の後を追った元一等航海士・神尾修二はアフリカ・コートジボワールに降り立った。俊を見つけ出し、日本の母親に送り届ければ仕事は簡単に終わるはずだった。だが、彼の足どりはつかめず、捜索はたび重なる妨害にあい、神尾は生命を狙われた。――男の誇りを守るため、彼は灼熱の地での闘いを始める」と。

水町俊という青年は、神尾が横浜で2階の部屋を借りている小さなレストランの女主人・水町三佐子の息子だった。彼を追ってくれと依頼されたときには、水町三佐子だけではなく、彼女と関係の深い弁護士・八木からも頭を下げて頼まれた。めったに人に頭を下げることなどない、八木から頼まれたことで、何か理由があることは感じ取れた。

コートジボワールに着いて早々に、トーゴで役人をしている古い友人を通して紹介された、アビジャンのエミールという男と神尾は出会う。それから、このエミールという初老の男をガイドに、二人でシュン・ミズマチを探す旅に出る。

ようやく探り当てたシュンは、怪我でなかば屍体のようになって、村の奥に匿われていた。ぼろぼろになった身体ながら、シュン・ミズマチには、日本から消えた恋人・イザベラの行方を探り当て、彼女を守ろうとする意思は消えていなかった。それをシュンと殴り合いをすることで、神尾はしっかりと確かめる。

シュンを探し出し、日本に連れ帰るという仕事だったはずが、シュンの固い意志に触れ、やむなく一緒にイザベラを探そうと行動しはじめる神尾。何か共感を覚えたのか、エミールもそれに協力する。

そこからは、この「神尾シリーズ」独特のサバイバルな行程と、国内とはまったく違った環境のなかでも、あきらめずに目的に向かう、神尾の不屈な歩みが始まり、やむなくそれに同行した者たちも、やがて危険を冒してでも神尾に協力しようとする。

ここから先は、本書を読んで、じっくりとその神尾の「不屈の魂」に触れてほしい。「男は、最後まで立っていなければならない」という、無言だが強烈な、男たちの意思が物語の底流に流れている。

先の「群青」に始まる、この「神尾シリーズ」の現在までの文庫版ラインナップは以下の通りだ。

①「群青」(神尾シリーズⅠ)
②「灼光」(神尾シリーズⅡ)
③「炎天」(神尾シリーズⅢ)
④「流塵」(神尾シリーズⅣ)
⑤「風烈」(神尾シリーズⅤ)
⑥「海嶺」(神尾シリーズⅥ)


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