北方謙三「灼光」(神尾シリーズⅡ)

北方謙三「灼光」は、かつて一等航海士であった神尾修二が、横浜で陸(おか)に上がってから知り合った登場人物らと、ときには海を越えて外国で闘いを繰り広げるハードボイルド、「神尾シリーズ」の第2弾である。今回は、失踪したひとりの青年を追って、アフリカ・コートジボワールまで神尾はやってきた。そこから物語が始まる。
文庫版カバーにはこうある。「失踪した青年、水町俊の後を追った元一等航海士・神尾修二はアフリカ・コートジボワールに降り立った。俊を見つけ出し、日本の母親に送り届ければ仕事は簡単に終わるはずだった。だが、彼の足どりはつかめず、捜索はたび重なる妨害にあい、神尾は生命を狙われた。――男の誇りを守るため、彼は灼熱の地での闘いを始める」と。
水町俊という青年は、神尾が横浜で2階の部屋を借りている小さなレストランの女主人・水町三佐子の息子だった。彼を追ってくれと依頼されたときには、水町三佐子だけではなく、彼女と関係の深い弁護士・八木からも頭を下げて頼まれた。めったに人に頭を下げることなどない、八木から頼まれたことで、何か理由があることは感じ取れた。
コートジボワールに着いて早々に、トーゴで役人をしている古い友人を通して紹介された、アビジャンのエミールという男と神尾は出会う。それから、このエミールという初老の男をガイドに、二人でシュン・ミズマチを探す旅に出る。
ようやく探り当てたシュンは、怪我でなかば屍体のようになって、村の奥に匿われていた。ぼろぼろになった身体ながら、シュン・ミズマチには、日本から消えた恋人・イザベラの行方を探り当て、彼女を守ろうとする意思は消えていなかった。それをシュンと殴り合いをすることで、神尾はしっかりと確かめる。
シュンを探し出し、日本に連れ帰るという仕事だったはずが、シュンの固い意志に触れ、やむなく一緒にイザベラを探そうと行動しはじめる神尾。何か共感を覚えたのか、エミールもそれに協力する。
そこからは、この「神尾シリーズ」独特のサバイバルな行程と、国内とはまったく違った環境のなかでも、あきらめずに目的に向かう、神尾の不屈な歩みが始まり、やむなくそれに同行した者たちも、やがて危険を冒してでも神尾に協力しようとする。
ここから先は、本書を読んで、じっくりとその神尾の「不屈の魂」に触れてほしい。「男は、最後まで立っていなければならない」という、無言だが強烈な、男たちの意思が物語の底流に流れている。
先の「群青」に始まる、この「神尾シリーズ」の現在までの文庫版ラインナップは以下の通りだ。
①「群青」(神尾シリーズⅠ)
②「灼光」(神尾シリーズⅡ)
③「炎天」(神尾シリーズⅢ)
④「流塵」(神尾シリーズⅣ)
⑤「風烈」(神尾シリーズⅤ)
⑥「海嶺」(神尾シリーズⅥ)


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